ご観覧のポイント
日本一の長唄による地踊り
長唄は歌舞伎の演奏音楽ですが、勧進帳など劇に伴うもの。越後獅子など舞踊に伴うもの。
さらに吾妻八景など、舞台を離れての素唄ものなどがあります。
藤枝大祭りでは、長唄・三味線・囃子方というフルメンバーによる演奏で、地踊り(手踊り)を披露します。
そして、どの地区も必ず三曲は長唄による地踊りを披露できます。これは「長唄による地踊りの調査」で長唄・三味線・囃子方というフルメンバーでの地踊りの形態を持つ祭礼は、実は私たち
の藤枝大祭りがその規模と質において日本一だということがわかりました。
この長唄で地踊りを披露する形態は、江戸でも盛んだったのですが、明治になって屋台や山車が半ば強制的に東京都内から消え、神興担ぎの祭礼形態へと変化し、自然消滅してしまいました。また東京周辺の千葉県佐原市や埼玉県川越市などでは、佐原囃子や神田囃子など、お囃子の演奏に力が注がれ、長唄による手踊りは明治半ばには衰退しています。
現在では、東海道の旧宿場町、藤枝・島田・掛川にのみ、この長唄による手踊りという祭礼形態が継承されているに過ぎないのです。島田の大井神社の帯祭りでは、五台の屋台が曳き回されますが、上踊りに重点が置かれ、長唄による地踊りは、簡略化された曲唄と踊りになっています。また掛川市の大祭でも六十台近い屋台が曳き回されますが、遠州祭り囃子に力点が傾き、長唄による地踊りは、三ヶ町を除けばみなテープによる演奏で、踊り手も三十人以下と小規模です。したがって、一台の屋台で八十人以上もの踊り手がいっせいに踊る藤枝大祭りのような処は、他にありません。まさに日本一の長唄の地踊りなのです。最終日には、連合会本部の前で各屋台の曳き回しと地踊り披露がありますので、どうぞご覧下さい。
屋台の曳き回し
とにかく、太く長い梃子棒を屋台の前面に取り付けての操作方法は、東海道ではわたしたちの藤枝大祭りが唯一です。益津地区内の路地での屋台運行は、梃子棒の微妙な操作が見ものです。
また、屋台の回転は、本通りの交差点で行われますので、どうぞお見逃しなく。
屋台の曳き回しにも、独自な操作方が見られます。屋台方は、屋台長を筆頭に、屋台係り、梃子係り、車輪係り、電源係りなどで構成されますが、屋根の先頭中心に鬼瓦と呼ぶリーダーが立ち、
出発には屋台長からこの鬼瓦役に屋台の運行操作の全体指揮権が委ねられます。
鬼瓦役は、始動命令を日扇や拍子木で下にいる受け手に知らせ、受け手は、チャキと呼ぶ拍子木で綱係や梃子係りに伝達します。さらに左右に屋台を振るなどの運行過程での操作は、梃子長と呼ぶ梃子棒操作係りに鬼瓦役から直接伝達されることもあります。
屋台を回転させるには、まず、梃子棒で左右どちらかに回すように曳くのですが、このとき片方の車輪に止め棒を差し込んでブレーキをかけることもあります。